今でも忘れられない占い体験は、大学4年のクリスマス。神戸三宮のさんちかタウンで西洋占星術とタロットで占ってもらいました。

時期を詳細に覚えているのは、前日は泊りがけのゼミの忘年会だったからです。学生たちが「マヤカン」と呼んでいた摩耶観光ホテル。昭和4年に創業された豪華ホテルだったのが、土砂崩れで営業停止となり、ホテルの一部を学生に格安で貸し出していたのです。キッチンが使えるので食材を持ち込み、飲んでそのまま泊まれるとあってゼミやサークルの宴会によく使われていました。

「クリスマスイブに忘年会なんて」と、恋人がいる学生には不評な日程でしたが、平日はそれぞれ講義やアルバイトがあり、全員が泊れるのが土曜日しかなかったのです。翌朝は彼に車で迎えに来てもらう女子もいました。

そんな彼のいない友人と私はバスと阪急電車を乗り継いで三宮へ。さんちかタウンでふと目に入った占いの館に吸い込まれたのです。3か月後に卒業が迫り、学生最後のクリスマスなのに彼もいないという焦燥感がそうさせたのでしょう。

40年近く前のことでも、言われたことをはっきり覚えています。

「今の彼とうまくいっていない? そんなこと気にしなくていい。旅先で新しい彼と出会うから。来年の3月に」

はっきり覚えているのが、どんぴしゃり当たったから。3月に卒業旅行でアメリカ単独横断縦断・グレイハウンドバスの旅に出て、テキサス州エルパソのバスディーポで会った人と結婚し、今年で35年になりました。

ちなみに友人は「見合い結婚」と言われ、「恋愛結婚がしたい」と嘆いていましたが、同じ会社の人と見合い結婚して、今では孫もいます。

 

占い師がすごいというよりも、あの日の占い師は天の声をストレートに伝える管や筒だったと思います。かっこよく言い換えれば、中空の竹(hollow bamboo)。

占いの学校で同期だった友人は、あっという間に予約が何カ月先までも埋まる超人気占い師になりましたが、「どこからそんな考えが浮かんだのかわからず、無意識のうちに言い放っている」そうです。自分は言葉が通り抜けていくだけの存在で、そのルートを詰まらせてしまうのは、欲。「当てたい、お客さんにすごいと思われたい」という承認欲求が出たとたん、言葉は降りてこなくなります。さんちかタウンの占い師はあの時、なんのてらいもなく淡々と降りてきた言葉をそのまま伝えてくれたのでしょう。

 

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