『女帝 小池百合子』のあまりのおもしろさに、一気に読んでしまいました。

たしかに小池百合子の命式は個性的です。

年柱 壬辰(みずのえたつ)

月柱 丁未(ひのとひつじ)

日柱 壬戌(みずのえいぬ)

日干の壬が月干の丁と干合(かんごう)。さらに年干の壬も月干の丁と干合しています。干合は切ろうにも切れない特殊な結び付き。日干は月干としっかり結び付きたいのに、年干も月干に絡んでいます。男女間の三角関係のようなもので、嫉妬が燃え上がる妬合(とごう)です。

もちろんこれだけでは小池百合子の強烈な人生を説明しきれず、財も才もないのに見栄っ張りで上昇志向の強い家に生まれ育ったことも深く影響しているでしょう。

どの本を読んでも、開運術のネタはないか探してしまいますが、『女帝 小池百合子』には、靴を巡る興味深い話があります。

1993年の衆院選挙。小池百合子は兵庫二区で土井たか子と戦います。当時は中選挙区制で定員は5名です。

当時41歳、テレビキャスター出身の自称「芦屋令嬢」の小池百合子に対し、24歳年長の土井たか子は社会党の地味な高齢女性でした。

しかし、土井たか子は令嬢まではいかなくても、小池よりずっとお嬢様育ちです。父は開業医で経済的に恵まれ、当時の女性にはめずらしい高い教育を受け、憲法学を専攻し大学で教えていました。政界に入ったのは恩師や社会党委員長に説得されたためです。

ノンフィクション作家の島崎今日子のレポートによると、小池百合子がきれいなスーツに身を包み、ミニスカートをはいて完璧な化粧をしていても、靴は一足だけで、ひどく汚れていた。一方、土井は服に合わない時もあったが、靴を何足か替え、それらはいつもきれいに磨かれていたそうです

「足元を見られる」という言葉がありますが、「どんなに高価そうな服を着ていても、詐欺師は靴が汚い」と言われます。まさに小池百合子のうさんくささが伝わるエピソードです。

 

そして、靴と言えば須賀敦子の『ユルスナールの靴』にこんな一節があります。

きっちりと足に合った靴さえあれば、自分はどこまでも歩いていけるはずだ。そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に出会わなかった不幸をかこちながら、自分は生きてきたような気がする。

日本に近代的な上下水道設備を施工する会社の経営者の家に生まれ、1953年にヨーロッパに留学した須賀敦子こそ、本物の芦屋令嬢です。

海外留学できたのは実家の財力があってこそだったでしょうが、イタリアで巡り合った結婚相手はあまり裕福ではない鉄道員の息子。新しい神学の流れを受け継いだ共同体であるミラノの書店の仲間です。須賀敦子はまさに自分の足に合った靴を見つけ、イタリアと日本の文学界の架け橋となりました。

 

そんなことを考えながらこの週末は靴箱の中を拭いて風を通し、くたびれた靴、履きにくい靴は処分するつもりです。

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