神がかった占いで客を次々と呼び寄せる人気占い師。使っている占術は四柱推命ですが、どこからそんな読みが出てくるのか見当もつきません。占い学校で同期だった友人なので「どういうロジックなのか」と聞いたところ「自分にもわからない。本人と命式を前にすると勝手に言葉が出てくる」とのこと。
占いもここまで来ると文学です。
『食べて祈って恋をして』の著者、エリザベス・ギルバートのTEDトーク「創造性をはぐくむには」を思い出しました。
古代人は、創造性は個人の中から生まれるのではなく精霊なものによってもたらされると考えていました。そして古代ギリシャ人は精霊を「デーモン」、ローマ人は「ジーニアス」と呼びます。
その人が持っている才能ではなく、精霊が降臨して芸術作品ができる。その一例が詩人のルース・ストーン。
バージニアの田舎で畑仕事をしていたときに、詩の精霊がやって来るのを感じました。一群の風のようなものが大地を越えて突進してくるのです。詩人のやるべきことはただ一つ。死に物狂いで家へと走り、紙と鉛筆を手に取ること。詩をつかまえて書き留めるのです。
占いの現場でもこうした体験をしたことがありませんか。なぜだかわからないけれど、カードや易の卦を見た瞬間に口から出た言葉。占いのロジックを超越して、その場に最もふさわしい占断。それは占い師が優秀だからではなく、たまたま占いの精霊が降りてきたのです。
占いの理論を学ぶのと同時に、精霊の通りやすい体にならなければなりません。前述の神がかり占い師は、無意識のうちに発した言葉がぴたりと当たったとき「まるで自分が土管みたいになって、何かが通り抜けていく」と表現しています。
そして、通りのいい媒介であるためのアドバイスは下記の通り。
「占いを当てて、お客様に『すごい』と思われたい。そういう気持ちになると、土管は詰まって、言葉が降りてこなくなり、はずしてしまう」