先週に続いて仁田丸久『周易裏街道』。

前書きによると、復刻版が出るまでは占い専門の古書店で100万円ほどで売られていたそうですが、私にとってはそれ以上の価値があります。お金と対話するようになって、ニューヨークに行った私のお金は目覚ましい活躍をするだけでなく、配当という名の仕送りをしてくれます。

仁田氏が説くもう一つの秘策は「お金を木の葉に変えること」。

狐は木の葉を小判に化かしますが、人間は小判を木の葉にすることもできるというのです。先週書いた「金離れのいい親分」はお金を木の葉にしたからこそ、何の未練もなく散らすことができたのです。

これは株式投資の絶好のアドバイスです。新NISAが始まり、投資を始めた人が増えましたが、暴落するとたちまち動揺して、売ってしまう。いわゆる「狼狽売り」です。もっと安くなったところで買い戻せばいいといっても、そんなタイプは「まだ下がるかもしれない」と手を出せません。

株式市場にお金を投じたら、それは木の葉になったと念じるのです。下がっても木の葉だからしかたがない。そうした境地に達していれば市場から退場することはありません。

仁田氏は「金は旅をさせんといかん」とも言っています。

わしは、金が返ってくると怒ることにしてる。充分なことをせずに手ぶらで一体誰にことわって帰ってきたんや。もう一ぺん出て行けと、尻をひっぱたいて追い出す。すると、娘と同じで、子供をうみましてといって、利子を持って帰ってくるのだ。

この一節を何度読み返したことでしょう。「かわいい子には旅をさせよ」ということわざがありますが、子供もお金も「自分が産んだから、育てたから」「自分が稼いだから」と手元にずっと置いてはいけないのです。

 

さらにもう一つのアドバイス。

「私はこんなにお金を持っているぞ」と見せびらかしてはいけない。お金はうつろいやすいものだから、金持ち風にしていると、お金が余計うつろいやすくなるというのです。金に飽かして旅行ばかりして、「ここに行った、あそこに行く」と公表している私はちょっとまずいかも。しかし、飛行機はエコノミー、宿はビジネスホテル、旅装はモンベルで荷物はバッグパックで見た目は倹約旅行者。たいした贅沢はしませんが、うつろいやすいお金だから、あちこちの旅先でうつろわせて経済を回せたら本望です。

 

「執着を手放して真の無執着な心になると、うつろいやすいお金も幸せも、しかりとつかまえることができ、災いも転じて福となし、宿命を変えることができて、現実的に栄えられる」というのが仁田氏の結論。

投資で一番儲けた人は、自分が投資したことを忘れた人であり、実際に死者のポートフォリオを何十年も放置しておくとプロのトレーダー以上の運用益を上げたというデータもあります。

いったん相場に投じたお金を木の葉として見ることができればちょっと上がったらあわてて売って大きな利益を逃したり、暴落で狼狽売りして損しただけで終わることもないでしょう。俗世に生きる人間にはむずかしいことだからこそ、その境地に達するプロセスが人生なのかもしれません。

 

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