昔の小話には、年の瀬を越すために金策に走り回る商人がよく出てきます。

冬至を過ぎて陽の気が少しずつ伸びて来ているといっても、地上に届くにはタイムラグがあり、まだまだ厳しい寒さが続きます。懐が寂しいと、ますます寒く感じたことでしょう。

一昨年のコロナショックに続き、今年はウクライナ侵攻とアメリカの利上げで相場と為替は乱高下しました。ちょっとしたタイミングの違いで損益に大きな差が生じるのですが、「あのとき売っていれば」「買っていれば」という思いを引きずるタイプは相場に向いていません。

割り切るための呪文「頭と尻尾は、くれてやれ」。

底値(尻尾)で買って天井(頭)で売るのはすべての相場師の夢。だけど、そんなことができる人はそうそういません。魚を丸ごと食べることができないのと同じで、頭と尻尾は無視して上下に余裕を持って確実に利益を得ろという教えで、江戸時代の米相場で大儲けした相場の神様の言葉です。

アメリカにも同じようなことを言った相場師がいます。

先日、NHK映像の世紀バタフライエフェクトの世界大恐慌の回。JFKの父、ジョセフ・ケネディは暴落前に売り抜いて巨万の富を手にします。といっても最高値ではありません。「最高値まで待つ者は馬鹿者だけだ」と冷静に判断したのです。「まだはもう、もうはまだ」という相場の教えもあり、「まだ上がるだろう」と欲をかきすぎると暴落に巻き込まれるのです。

相場に限らず、仕事や恋愛も同じこと。準備がすべて整ってから始めようと思っているうちに年老いてしまうし、100%理想の恋人を待つのなら一生独身です。最高値ではなく、ほどほどのところで手を打ってこそ次の展開があります。

幸運なことだけが起こり続けることはないし、不運続きでも何か幸運に恵まれるものです。頭と尻尾がやたら大きくて食べる部分が少ない魚でも、ありがたかくいただいて、新しい年を迎えたいものです。

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