桐野夏生がバブル期の日本を描いた『薔薇とダイヤモンド』は、証券会社に勤務していた佳那(かな)と水矢子(みやこ)という女性二人が主人公なのでテーマは株式相場です。

南郷という女性占い師も登場し、水矢子が住み込みで働くようになります。南郷は株の値動きも占いたいと思い、水矢子の伝手で投資グループから情報を得るようになります。グループのモデルは「兜町の風雲児」と呼ばれた中江滋樹の投資ジャーナル。絶対儲かる銘柄を教えるという触れ込みで全国の投資家から巨額の資金を集めたものの、返せなくなり詐欺容疑で逮捕されています。

得た情報をもとに始めた「南郷先生の相場占い」は、けっこう当たると評判になり、口コミで客が増えていきます。相場占いの料金は通常の占いの2倍ですが、儲けた客はご祝儀も置いていくので収入は大きく上がりました。小説ではバブル崩壊後の南郷は描かれていませんが、相場占いを信じて損をした客から恨まれたことでしょう。

恋愛とか金運全般を占うのと異なり、相場占いは危険を孕んでいます。「あの人と結婚すべきか」と占ってゴーサインが出たから結婚して不幸になったとしても、結婚していなかったらもっと不幸になっていたと考えることもできます。一方、相場占いの場合は株が上がったか下がったかリアルタイムでわかってしまうのです。ノーベル経済学賞を受賞した研究者を集めたヘッジファンドが破綻したという例もありますし、株価の予測は人間には無理です。そもそも、占いで上がる銘柄がわかるのなら、人に教えずに自分でその株を買えばいいのです。

占いの講座でこんな話を聞きました。

「勉強のためどの銘柄が上がるか片っ端から占っていった。けっこう当たるので、実際に占いの通りに株を買ってみたら、とたんに当たらなくなった」

どんなに占いの精度を上げたところで、本人の金運が悪ければ実際の利益を手にすることはできません。占いを使って株で儲けようとする前に、金運を上げるためにどうしたらいいかを考えるほうが得策です。

 

「真珠とダイヤモンド」に出てくる占いについては、ウラナイ8ブッククラブで紹介しています。小説、エッセイ、映画など占いが出てくる本ならなんでもOKの掲示板です。過疎地のように静かですが、本を読む人がどんどん減っている現状ではこんなものでしょう。覚書のように、、たまに本を紹介しています。

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