先月、杏子さんの易の会に参加しました。

「易が初めて」という方もいらっしゃって、杏子さんが易の成り立ちから説明しました。私が易を習い始めた頃を思い出しました。

恵比寿の占い学校で東洋占術の講座を片っ端から受講していたのですが、易の講座案内に「易を学べば『目に映るすべてのことはメッセージ』だとより深く理解できるでしょう」といったことが書かれていました。

荀子曰く「善く易を為むる者は占わず」。易の達人となれば、わざわざ卦を立てなくても、起こっている事象から吉凶を判断し行動の指針を立てられます。

なかなかその域に達することはできませんが、易を学んでいるうちにアンテナの感度はよくなってきます。まさに目に映るすべてのことから、易の卦が浮かび上がってくるのです。大熊茅楊『春夏秋冬 易学占例集』には、人相から易を立てる例もありますし、世相から「これはまるであの卦のようだ」と感じることもあります。

 

占い学校の易講座で天山遯(てんざんとん)の説明でナチスによるユダヤ人迫害が出てきました。天山遯は良からぬものから逃れる卦。初爻と二の陰は逃げられません。五爻、上爻と上に行くほど無事に逃げられて吉です。迫害が始まった頃にアメリカに逃げたユダヤ人です。

1月29日、アウシュビッツ解放から75周年の記念式典が開かれ、93歳の元収容者が「アウシュビッツは急に空から降ってこない」とスピーチしました。

ユダヤ人差別は買い物制限やダビデの星を衣服に付けるように命じられるなど段階的に始まり、最終的に財産や家を取り上げられ強制収容所送りとなったのです。

この記事を読んだ1月末、新型コロナウイルスは武漢のニュースでしかありませんでした。国境を越えて多くの人が行き来しているのですから、ウイルスが日本に入って来ないように完全にシャットアウトするのは無理だとしても、そうたいしたことにならないだろうし、暖かくなれば収まるだろうと楽観していました。しかし、天山遯の卦が浮かび「迫害が始まった頃のドイツのユダヤ人もこんな風に考えていたのだろうか」と連想したのです。

ここで持ち株を全部売り払っていれば、私は天才相場師になれたのですが、そこまで決断できませんでした。結局、かなり値上がりしている株を売却して利益を確定するのにとどめました。

せっかく「天山遯」というメッセージを得たのに、易への信頼がこの程度だったのかとがっかりしましたが、世界中の人が経済的ダメージを受けている中で大儲けするのはあまり褒められたことではありません。余剰資金を動かしているだけだし、損するぐらいでちょうどいいと割り切っています。易経の順番は「山沢損」が先で「風雷益」へと続きます。絶対に損をしたくないという人は益も得られないのです。

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