杏子さんの易の読み会では、旅の成り行きやアドバイスをよく占いますが、旅に出た後も八卦にあてはめてどの卦になるかを考えるのも楽しいものです。

12月に新潟を旅しました。

上越新幹線で東京から新潟まで、トンネルを抜けるたびに空の色が暗くなっていくのを実感し、山の卦が次々と浮かびました。

易の卦の火山旅(かざんりょ)は、現代のような物見遊山の旅ではなく、盗人におびえ懐具合を気にしながらの心細い旅です。江戸と越後を行き来する旅人はそんな感じだったのでしょう。

山を越えて東京に出たいという強い念が田中角栄の「越山会」の原動力になったのでしょう。田中角栄が総理大臣に就任した時、「高等小学校しか出ていなくても総理大臣になれる」と大きな話題になりました。大臣時代、東大卒の官僚を虜にする人たらしだった田中角栄は、年間数千万円の大臣機密費(交際費)を次官以下に任せて自由に使わせました。そして、身銭を切って盆暮れにボーナスも渡しましたが、一切の見返りを要求しなかったそうです。まさに山択損(さんたくそん)を実践して総理大臣まで上り詰めたのです。

しかし最後には汚職事件で逮捕。山風蠱(さんぷうこ)になってしまいました。娘の真紀子も政治家になったのは、山風蠱の爻辞「父の蠱を幹(ただ)す」と思ったからでしょう。

 

新潟にはおいしいものが多くて、食いしん坊の夫があれも食べたい、これも食べたいと店に急いで行こうとします。まるで雷(進む)の勢い。新潟の山と合わせて山雷頤(さんらいい)。初爻と上爻の陽があごで、間にはさまれた4つの陰が食物です。

海の幸も日本酒もおいしかったのですが、やはり米所。おにぎり専門店で握ってもらうおにぎりは、これこそ日本のご馳走です。具はいろいろ選べますが、いちばんおいしいのは塩おにぎり。お米のおいしさを最大に引き立てます。山火賁(さんかひ)の上爻「白く飾る」。最も美しいのは飾りのないありのままの状態です。

 

1月から2月はJALマイル修行のシーズンなので沖縄へ。実際の方位は西南ですが、南のイメージが強いので「火」の卦です。繰り返し沖縄に行くから離為火(りいか)。そして、戦争で大きなダメージを受けた歴史に触れると地火明夷(ちかめいい)を連想します。そしてソーキそばに乗った大きな骨付き肉はリアル火雷噬嗑(からいぜいこう)。山雷頤の間に1つの陽爻が入った形です。

 

今年は再び海外に行けるかもしれません。遠方を意味するのは巽(風)。易経では、火山旅の次に巽為風(そんいふう)が続きます。序卦伝には「旅の身は知る人も無く、容易に受け容れられない。従順な、人の腹中に入りこむような態度が必要である。そこで巽卦を旅の卦に続ける」とあります(本田済「易」朝日選書より)。風の徳は「従う、柔軟、円満、コミュニケーション」。今年も風のようにあちこち旅に出たいものです。

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事