ガルシア=マルケスの両親の結婚は、母の一族から反対されていました。父のガブリエル・エルヒオは愛想のいい伊達男で、女性に詩を巧みに作ったり、ダンスやヴァイオリンも得意。娘を嫁がせるにはちょっと心配な感じですが、反対の最も強い根拠は彼が私生児だったこと。ガブリエルの母は自由な精神を持ち、5人の男の子と2人の女の子を結婚もせず一緒に暮らしてもいない3人の異なった父親の間にもうけていたのです。さらに悪いことに、ガブリエルは未婚ですが3年前の18歳の時に息子が生まれ、20歳の時に別の女性の間に娘が生まれているのです!

こんな条件の悪い求婚者がいるでしょうか。

しかし、当時のコロンビアの道徳観は現代と異なっているようで、母の父のマルケス大佐も3人の子供の他に9人の子供をすべて異なった母の間にもうけていて、その中には結婚後に生まれた子もいたというのです。その全員をマルケス大佐の妻は自分の子供のように受け入れていました。

マルケス大佐は娘を求婚者から引き離し恋の病を癒すために二人の接触を禁止しただけでなく、シエラ・ネバーダ山脈をラバで2週間かけて踏破し広大な平地を横断するという遠方に娘を連れて行きます。

最終的に二人は結婚し、11人の子供、65人の孫、88人の曾孫、14人の玄孫に恵まれます。家族の反対に屈していたら、この大家族はこの世に存在しませんでした。

二人が結婚できたのは、運命の相手だったからでしょうが、街角のジプシー女のトランプ占いも一役買っています。ジプシー女は、G・ガルシア=マルケスの母が「長く幸福な障害を、遠くにいるたったひとりの男とともに問題なく生きることになる」と告げたのです。そしてその男は彼女のことを死ぬまで愛してくれると。

この占いを心の支えにして、二人は結婚にこぎつけ、コロンビアにノーベル文学賞がもたらされました。

 

二人の長男、G・ガルシア=マルケスも予言によって人生を決定付けられました。

子供の頃、アルファベットを読むのに手間取っていたのですが、学校で子音の文字の名前でなく音を教えてくれたことから、一気に本が読めるようになり、家の物置の埃だらけの本に吸い込まれるように夢中になりました。その本は『千夜一夜物語』。

たまたま家に滞在していた作家が「すげえな! この子は作家になるぞ」と予言したのです。世界中を幻惑させるマジック・リアリズムの旗手になるとまで言われていませんが、予言はまさに成就したのです。

もちろんすべての予言が的中するわけではありませんが、時には世界を変える予言があることを占い師は頭の隅に留めておきましょう。

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