原田ひ香の小説に中国の占いが出てきました。

主人公は脚本家志望の青年。母の祖父が中国人で、戦前に大陸から渡ってきたという設定です。母は通訳として貿易会社で働き、産院でも仕事の電話のメモを取っていたら、生後三日の主人公がペンをしっかり握ったのです。母は驚愕して「この子は絶対、作家になる」と確信しました。そのこともあって、主人公はなかなか芽が出なくても文筆業の夢をあきらめられません。

中国では一歳の誕生日に、さまざまなものを机の上に載せて子供の選ばせる風習があるそうです。そろばんを選んだら商売人、食べ物を選んだら料理人ものさしを選んだら設計士、印鑑を選んだら官僚といった具合に将来の職業を占います。

 

有名な占い師の取材で「自分が何をやりたいのか迷ったら、子供の頃に好きだったものを思い出すといい」とと言われたのを思い出しました。「三つ子の魂百まで」です。

私は物心ついた時から活字中毒でした。文字を読むのが大好きで、絵本は字が少ないので好きではありませんでした。本屋さんで本を買ってもらうと、帰り道で全部読んでしまうので「いくら買っても追いつかない」と親に嘆かれたものです。

うちの親には欠陥があり、恨みに思っていることも多々ありますが、本好きだった私を認めてくれたという点だけは感謝しています。高校の進路指導で教育学部を勧められて「未知のことを学びたいのに、自分が知っていることを教える仕事なんて絶対やりたくない」と言い放った私をたしなめることなく、好きな学部に進学させてくれました。安定した会社の事務職を辞めてコピーライターになると告げても、反対するどころか「そのほうが向いている」と考えていたようです。常に新しいページをめくって読み進めたいという欲を封印せずにすんだおかげで今の自分があります。

 

子どもの頃、夢中になったことは何ですか? それを十分に楽しんでいますか? もし、もう止めてしまっているのなら、もったいない。中には再現しにくいこともあるかもしれませんが、占いで鍛えた連想力を駆使して実現可能なものに置き換え、大人になっている今こそ、存分にやり尽くしてみてはどうでしょう。

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