ケン・フォレットの『大聖堂』。

冒頭が残虐な処刑シーンなので読み進められず中断していたのですが、そこを乗り越えると、読み終わるのが名残惜しいほど夢中になりました。

 

舞台は十二世紀のイングランド。いつかは自らの手で大聖堂を建てたいという野望を抱く職人の一家と、敬虔で有能な修道院院長が物語の軸です。

読み進むうちに、これはペンタクルの物語だと感じました。ウェイト版のパメラ・コールマン・スミスの絵柄が次々と頭に浮かんできます。

全体のテーマはペンタクルの3。教会建築に関わる職人たち。信仰が柱にありますが、資金が必要だし資材や職人の手配といった現実問題をクリアしないと大聖堂は建ちません。

最も感情移入した登場人物は伯爵令嬢のアリエナ。

聡明で生活力に溢れ、お仕着せの人生を拒否するアリエナですが、生涯で二度、ペンタクルの5の境遇に陥ります。

父が謀反の罪で捕らえられ爵位と領地を取り上げられた時、そして苦労して築き上げた財産を失った時。その都度どん底から這い上がり、ペンタクルの9の優雅な貴婦人に返り咲きます。

商才に目覚めるのは、農民が生産した羊毛を街まで運んで手間賃を得るというアイデア。ペンタクルの2です。姉の支援により弟のリチャードは小姓(ページ)から騎士(ナイト)へと順調に出世。一方、アリエナが愛したジャックはペンタクルの8の青年のように建築技術を習得していきます。そして父の統治能力を受け継いだのは弟ではなく姉のアリエナであり、最期は女帝として領地に君臨します。

修道院長のフィリップは幼くして両親を失い、修道院で育てられ自らも神の奉仕の人生を選びます。

荒れ果てた修道院の財政を立て直し、門前町として地元を繁栄させるのはペンタクルの10です。

壮大な物語を読み進めるのは最上の喜びであり、自分で小さな物語を作るのも楽しいもの。本とカードがあれば、一生退屈しなくてすみます。

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