「恥の多い生涯を送ってきました」は太宰治『人間失格』の一節ですが、恥のない生涯を送ろうとすると何もできません。

ここ一年以上取り組んできた易の本。

書いている最中は「東洋占術の大先生たちに誹謗中傷されるのではないか」という恐怖との闘い。なんとか入稿したものの校正の段階となると、なんと自分は文章が下手で語彙が貧弱なのかと消え入りたい思い。

ゆみこさんと杏子さんの3人で校正作業を進めているのですが、目で読むだけでは間違いが見つけにくいので、美声のゆみこさんに読み上げてもらって杏子さんと私が目視するというスタイルです。

ライターになりたての頃は、自分が書いた文章を読み上げられるのが苦手でした。コピーライターからキャリアを始めたので、クライアントから「声に出して読んでください」と言われることもあり、消え入りたいような思いで読んでいました。そのうち自分の文章は商品なのだと割り切りました。

 

外国人と話すのが好きですが、若い頃の私はその場に日本人がいると無口になっていました。「あんなへたな英語で」と思われるのがこわかったのです。

数年前の稚内旅行。

弾丸低気圧の影響で強風が吹き荒れ、利尻島へのフェリーは決行。街中で過ごすしかなく、映画『キングスマン』を観ることにしました。

映画館はがらがらで、外国人カップルが一組いるのみ。上映の途中で画像が切れました。スタッフの女性が「強風で電気系統のトラブルが生じています。しばらくそのままでお待ちください」と説明。とっさに立ち上がって通訳しました。文法や発音がおかしくても、コミュニケーションしようとする日本人がいることを示したかったのです。

数分後に復旧して映画は再開しました。映画館を出る際に女性スタッフから「先ほどはありがとうございました」とお礼を言われましたが、この人も日本人の私がいなかったらなんとか英語で説明しようとしたかも。

 

恥をかくぐらいなら何もしないでおこうと立ち止まっては、そこで終わってしまいます。熊野古道で泊まった民宿のご主人は夕食ができると「ディナー、OK!」の二言で客に伝えていました。外国人観光客で予約は常に満杯です。

 

易を始めた頃の私は、はずすのがこわくて講座で指名されてもうまく答えられないことがよくありました。その点、易の達人は肝が据わっていて、はずすことを恐れず発言します。占いが100%当たるとしたら、ちょっと不気味。たまに当たるぐらいでちょうどいいと開き直っています。

ライターの仕事、英語、占い。恥をかくことから逃げていたら、こんなに長く続けることはできなかったでしょう。

 

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