「棚からぼたもち」といえば、労せずして思いがけない幸運に恵まれることを指しますが、ある風水の先生によると「棚ぼたほどむずかしいものはない」とのこと。

 

「単に口を開けて待っているのではなく、ぼたもちが落ちてくるタイミングで、正しい棚の下で口を開けなくてはならない。正しい時間に正しい場所にいて、正しい行動をとれることはめったにない」

私は30歳でフリーランスのライターとなり、30年近く働いてきました。時代がよかったとはいえ、なんとか食べてきて、そろそろリタイアも考えるように。棚ぼたの連続の職業人生でしたが、それなりにぼたもちが落ちてくる時間と場所を探ってきたのです。

ネットが浸透する前の時代は、編集者が企画を思いついた時に、編集部にいることがかなり重要でした。当時の雑誌の編集部にはフリーランスのためのスペースがあり、ライターが適当にやってきて作業していたものです。いくら朝型でも午前中に行っては無駄足です。夜型の編集者はだれも出社していませんから。

今は原稿をメールで送るので、編集者とまったく顔を合わさずに入稿から校了へと進むことも多くなりましたが、この時代はこの時代の棚ぼたのスタイルがあるはずです。

 

棚ぼたで思い出すのが、アメリカ人ミュージシャンのアル・クーパー。

ボブ・ディランの代表曲「ライク・ア・ローリング・ストーン」の印象的なイントロのオルガン奏者です。

アル・クーパーは20代になったばかりの駆け出しのミュージシャンで、ディランのレコーディングになんとかもぐりこんだものの、自分よりうまいギタリストがいたため、しかたなくオルガンを弾いていました。この時、彼はオルガンを弾くのは初めてでした。

ディランの気まぐれでイントロはオルガンでいくことになりましたが、プロデューサーは「彼は本職のオルガン奏者じゃない」と止めようとしたのですが、ディランはそう言われれば言われるほど、アル・クーパーのオルガンにこだわったのです。ロック史上最も偉大とされる名曲がこんないきさつで誕生したとは!

 

スポーツクラブに行く時間のタイマーのアラーム音を「ライク・ア・ローリング・ストーン」に設定しています。週5回、アル・クーパーのオルガンを耳にするたびに、正しいタイミングで正しい場所にいるための体力と気力をキープするために、エクササイズをさぼってはいけないと誓うのです。

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