占い師には詩人のような表現力が求められますが、言葉を扱う職業で社会に対する影響力が最も大きいのは政治家です。

 

『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』という長いタイトルの本があります。占いがちらっと出て来るのでウラナイ8ブッククラブで紹介しようかと思ったのですが、本筋とあまり関係がないのでここに書くことにします。

著者の和田靜香氏は1965年生まれのフリーライター。私より5歳下の同業者です。専門が音楽で2008年頃から仕事が極端に減り、コンビニ、パン屋、スーパーなどの飲食系で最低賃金の時給でバイトをしてきたそうです。そこにコロナ禍となり、ますます生活苦に。

和田氏が話を聞いた国会議員は小川淳也氏。立憲民主党の衆議院議員です。同じ選挙区に地元の放送局と新聞社のオーナー一族の自民党三世議員、元デジタル大臣の平井卓也氏がいるため、選挙は苦戦続きです。

何を聞いても答えが明快に返ってくる小川氏に接したことで、和田氏は「政治家は言葉の職業でもある」と感じ入ります。そうです、本来、政治家は国民に言葉で伝えなければいけないのです。困難な時こそ、心に響く言葉を発してもらいたいのに。念仏のように「安全、安心」を唱えて東京オリンピックを開催し、今は「注視します」「検討します」…

 

小川氏はこう言っています。

社会が変わるときって「初めに詩(うた)来たる」って言うんだってね。初めに詩がきて、次に音楽と芸術が来て、その後に設計とか技術が来て、最後に建物が建つと、建築の専門家の方が教えてくれたんです。

ささやかながら、占い師も「詩」を伝える仕事です。建築家や政治家のように広く社会と関わる仕事ではありませんが、人生の岐路に立った人に「詩」をもたらすのです。

 

和田氏は音楽評論家・作詞家の湯川れい子さんのアシスタントになって音楽欄の記事を書き始めたのがライターになったきっかけ。この本で占いが出てくるのは、和田氏が生活に困窮してバイトに明け暮れていたときのこと。心配した湯川さんが「これからどうするの? 年をとっても食べていける何かを見つけなさい」と、手相占いの学校の授業料をもらったそうです。私もこういう太っ腹の女性になりたいものです。

結局、手相は身につかず、政治の本を書くことに。私も同じフリーランスのライターですが、言葉を使うジャンルは人それぞれだと改めて感じました。

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