人を相手にする仕事の場合、境界線を越えて近づいてこようとする人に悩まされることがあります。
30年ほどフリーランスのライターとして働いてきましたが、若い頃はこんなリクエストに悩まされることがよくありました。
「私も何か書きたいから編集者を紹介してほしい」
「ユニークな写真を撮っているから、どこか発表できる媒体はないか」
「ダンスを習っていて、こんど発表会があるから取材してくれないか」
まだネットが普及していなかった時代ですから、マスコミで働いているというだけで何とかしてくれると期待されたのでしょう。今なら個人がブログやホームページで発信できるので、こうした依頼は「まずネットでやってみたらどうでしょうか」と返すことにしています。
先日、「私が書くものを読んでほしい」という依頼がありましたが返信しませんでした。さして興味もない文章を読む時間があるなら、読みたい本が山のようにあるからです。しかし、無視するのは気分のいいものではありません。割り切って「いい人」を演じられたらいいのですが、相手が調子に乗って大量の原稿を送ってきて感想を求められたら対応できる自信がありません。
アメリカの作家のメイ・サートンは、メイン州の人里離れた家で一人暮らしをしていました。家を見つけて手を入れて庭を造るプロセスを日記として出版し、有名になりました。最初は訪ねてくる愛読者を歓迎していましたが、あまりにも来訪者が多くなったので移転を決意。たまに来る人なら相手もできますが、ネタが降りてきていざ書こうとするタイミングでお客の相手をするのは苦痛でしかなかったからです。拒絶された読者は「なんで他の客は歓迎したのに私は駄目なのか」と不満を抱きます。それなら住居を知られないようにし、アポなし客には会わないと決めておくべきだと考えたのです。
歓迎できないゲストを断っても罪悪感を抱かないための呪文は「遠くで幸せに」。つながりたくない人には、この言葉を贈り静かに距離を置きましょう。相性とタイミングが合えば、どこかで幸せなマッチングがあるはずです。ノーと言う勇気を持つために有効な呪文です。
占い師になると「変な客に粘着されてしまうのではないか」という心配もありますが、お金をいただいた時間の分だけ話をお聞きして占いのメッセージを伝えるのが占い師の役割。それ以上の関係を求められたら「遠くで幸せに」とつぶやいてお断りすればいいのです。

















