易の六十四卦は64分の1の確率で出るのではなく、人によってなじみのある卦、めったに出ない卦があります。これはタロットやインナーチャイルドカードも同じです。

そして易を続けているうちに「私にこの卦が出たらこういう意味」というおぼろげなパターンができてきます。

たとえば火風鼎(かふうてい)。鼎は三本の足がある鍋で、古代中国では王家に代々伝わる宝でした。跡取りとか相続がらみで出ることが多いのですが、ある占い師にとっては三角関係を示す卦だし、先日の冬至の年筮では料理を学んでいる方に出て、ストレートに煮炊きの意味に取りました。

このところ意識しているのが水風井(すいふうせい)です。ある講座で「井戸の釣瓶が行ったり来たりして水を汲むから、同じことを繰り返す勤め人に出やすい」と聞き、つまらない卦のイメージを持っていました。

2016年の冬至、深瀬まるさんが出した年筮が水風井でした。

カレーのイメージが強いまるさんなので、「おいしいカレーをたくさん作るんでしょうね」という読みをしたのですが、実はインド占星術の深い井戸を指していました。

無意識の井戸から水を汲む - 翡翠輝子の招福日記 (hatenablog.com)

 

そして、先日の杏子さんの易の会で宮古島旅行を占いました。コロナ感染の社会的制裁は致命的なダメージになるだろうと結局キャンセルして、パーントゥを思い出しました。

始まりは宮古島のパーントゥ - 翡翠輝子の招福日記 (hatenablog.com)

「ンマリガー(生まれ泉)」と呼ばれる聖なる井戸の底から取った泥を全身に塗って村に現れるパーントゥ。水風井は、爻が上に行くにつれて爻辞がよくなります。初爻は井戸の底で水は泥まみれ。最初に習った先生が「井戸の底には猫の死体」と解説しあまりのインパクトの強さに震えました。二爻は鮒(ふな)を育てるぐらいで三爻になって水が清くなるのですが、世間の人にはあまり飲まれません。四爻で井戸の内壁を修理し、五爻で多くの人に飲まれ、上爻になると井戸を幕でおおうことなく、すべての人に開放。汲み取っても汲み取ってもこんこんと水が湧く豊かな井戸です。

 

高島嘉右衛門の占例集で「某高官から高貴なお方の御身上を占うことを請われた。よって謹んで水風井の上爻を得た」とあります。そして「天がこの象を示したのは必ず理由があるので」と初爻から順次国のありかたを説明しています。

注釈に「やんごとなきお方とは、おそらく明治天皇であろう」。

猫の死体から天皇まで。まるで深淵を覗くかのようで、深淵からも覗かれているのです。易はあらゆる事象をカバーする無限の占い。必要なのは連想力と柔軟な心です。

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