先日、杏子さん主催の手相講座にお邪魔しました。

手相は道具も要らない手軽な占いですが、てのひらは千差万別ですから個性を深く読み取れます。

線だけでなく丘の状態も重要です。親指の付け根のふくらみ、生命線の内側の金星丘は生命エネルギーを貯蔵するタンク。スポーツが得意な人はここがぐっと膨らんでいます。そして小指の下、手首の上あたりのふくらみは月丘。創造性や情緒を司ります。

私の手のひらは全体的に薄くて、金星丘より月丘が発達しています。額に汗して働くのは苦手。玉紀さんは私の手を見て「典型的な頭脳労働者の手」と言いますが、勤勉な労働者にはなれず、産業革命前に生まれていたら食べていけなかったでしょう。大学を卒業してコネを使って一般事務職に就いたものの、「こんな単純なことを一日8時間もやらなくてはいけないのか」と絶望し、終業後にコピーライター養成講座に通い始め、2年後に広告制作プロダクションに転職しました。会社員には向かない手相だから当然のことですが、当時はまともな会社勤めができないことに劣等感を抱いていました。

その後、フリーランスのライターになり、週刊誌の記者として出版社に出入りして明け方まで入稿や校了に追われるようになりました。担当編集者が「どれだけ働いても、しょせん俺らは口舌の徒」と自嘲気味につぶやいていましたが、私にとっては最適な仕事でした。

 

不動産は現実そのものなので金星丘が司ります。先日の手相講座でも「土地付きの一戸建て」にこだわる人は親指の付け根がぐっとふくらんでいるのを見ました。

20数年前、青森の谷地温泉で高齢のご婦人と話が弾んだことがあります。自宅は千葉県で、結婚後はやりくりが大変だったけれど、コツコツ貯金して小さな古いアパートを購入。なるべくお金をかけずに改装して、住みやすい部屋にすると、入居者が途絶えることなく順調に家賃収入があり、それを元手に新たなアパートを購入し、悠々自適となり、ご主人の定年退職後は気に入った温泉を夫婦で訪れているとのこと。

これぞ私の理想の老後! 当時はマネー記事を書いていたので、取材のように根ほり葉ほり聞いてしまいました。浴槽には老婦人と私の二人だけで、ぬる湯なのでずっと話を続けられたのです。

このとき、ご婦人の手相を見せてもらわなかったのが悔やまれます。きっと親指の付け根がぐっと膨らんでいる手のはずです。

 

このご婦人に刺激を受けて「老後にお金を気にせず好きなところに旅するには本業以外の収入が必要だ」と思い至りました。親指の付け根のふくらみがない私には不動産業は絶対に無理。管理会社に任せればいいと言われますが、土地に縛られて動かしにくい不動産は財というより足かせのように感じてしまいます。月丘のイマジネーション、直感が活かすとなるとクリック一つでいつでも売買できる株式投資ではないでしょうか。そして日本円よりアメリカドルでの取引が好き。現実から離れて想像力を発揮できるからです。ただし、仮想通貨に手を出すほどのふくらみではありません。

手相のおもしろさは、生き方が変わると手相も変わるところ。玉紀さんの金星丘は立派ですが、鍼灸の仕事をお休みするうちにしぼんでしまったとのこと。だったら私の月丘がしぼんできたら相場から撤退するタイミングなんでしょう。

石川啄木は「働けど働けどなおわが暮らし楽にならざり」とじっと手を見ましたが、手相の知識があれば自分に合った蓄財法が見つかったかもしれません。

 

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