占いをやっていると精神世界が近しいものとなります。カルトが勧誘に占いを使うのは、「わあ、当たってる、なんでわかるんですか」と驚かせ、現実を超えた宗教の世界へと誘導しやすいからです。

 

仁田丸久の『周易裏街道』には、そうした危険への戒めがあります。「仙界を見た」という人へ向けた仁田氏の言葉。

なるほどそういう世界を見たというのは大変よい事だ。しかし、私は、あなたがそれを見たからといって、現に今あなたが住み、これからも住むであろうところの、今までの現実の世界が大したことではないと思ってはいけない。この現界も、その仙界も同じことだと思わんといけない。

 

人間は、一寸不思議なことができるようになると、すぐ現実を卑しめるようになる。するとその人は、もうそれ切りで進歩せぬのです。あの世界はこんなだったといつまでも思うから、現界に飽き足りないのです。それより毎日の平凡な生活に不思議を感じないといけない。

 

現世なんてつまらないと思っていた私が現世のおもしろさに目覚めたのは易のおかげです。

天からもたらされる数字の組み合わせで森羅万象を語るのが易。そして、筮竹やサイコロを使わなくても、ホテルの部屋番号やサウナのロッカー番号でもいいし、達人の域に達すると目の前の減少を八卦に置き換えます。偶然出てきた卦に込められた天からのメッセージを読み解くなんて、まともな人にはとても信じられない話でしょう。

 

先日、杏子さん主催の易の読み会で、玉紀さんが新しく買うテーブルについて占いました。

標準的なテーブルの高さは70cm前後。玉紀さんはそれより低めがいいのですが、標準サイズのようにたくさんのタイプが揃っていないし、お値段も高くなるとのこと。高さに妥協して標準サイズから選ぶか、それとも使い勝手のいいサイズにこだわるべきか、二つの卦を出しました。

標準の高さは雷地豫(らいちよ)の二爻。 低めは地山謙(ちさんけん)の三爻。

どちらも一陽五陰の卦で、雷地豫は四爻のみ陽、地山謙は三爻のみ陽です。この陽の位置がそのままテーブルの高さでは?。右側はテーブルとして高過ぎで、左側がちょうどいいように見見えてきました。

そして地山謙三爻の爻辞は「君子、労謙す」。卦の中のたった一つの陽なので、立派な働き者なのです。数年前、私が電気圧力釜を買おうかと思って立てたときも地山遜三爻が出て、玄米を炊いたり煮込み料理に活用しています。玉紀さんがテーブルを活用したいのなら、自分にぴったり合う高さを選び「労謙」するものにすべき。そう思って「材質、デザイン、価格は二の次にして、とにかく高さにこだわるべき」と伝えました。

数日後、玉紀さんから条件にぴったりのテーブルと椅子のセットを現品処分で手に入れたと報告がありました。きっと新居で大活躍するでしょう。

 

こういう経験をすると、易を通して天界に触れたような気になります。

生まれた瞬間の暦や天体の配置によって人生を語り、てのひらのしわから性質を読み取るなど、占いは現世にいながらにして不思議な回路に通じる方法です。わざわざ素っ頓狂なカルトに入信するより、自分で答えを探る占いのほうがずっとおもしろいと思いませんか。

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