前回、フィンランドを訪れたのは9月下旬から10月にかけてでした。日本なら絶好の旅行シーズンですが、現地のフィンランド人には「夏のほうがいいのに。とにかく一日でも早く来て。最高の季節がどんどん過ぎていくから」とアドバイスされました。

日本より北に位置するフィンランドは、夏と冬の日の長さが極端に違います。夏至祭(ユハンヌス)では、ほとんど日が暮れず湖畔に燃やしたかがり火のもとで朝まで延々とお祝いします。その反対に、冬至は大半が真っ黒で、糸のように細く赤い太陽がほんの短い時間、昇るだけ。

それでも、冬至を過ぎれば徐々に日が長くなるので、明るい気持ちになれるというフィンランド人。12月になればクリスマスを指折り待つ楽しみがあり、最悪なのが10月から11月だと言います。雪がまだ降らないので、街はどんよりと暗く、日ごとに夜が長くなる一方。この時期にうつ病を発症する人も少なくないとか。

フィンランドで迎えた10月1日、「日本では今日が衣替えの日で、夏服から冬服に替える」と話すと、フィンランド人に「そんな馬鹿な話があるものか」とあきれられました。

「気候は年によって違うし、暑さ寒さの感じ方も人それぞれ。決められた日に全員が冬服になるなんて絶対におかしい」

たしかにそうです。そして、フィンランドにはこんなことわざもあります。

フィンランドには悪い天気というものはなく、悪いのは服装。

秋から冬、そして春先までのうんざりするような暗い天気。特に厳冬期は防寒対策を怠ると、命にかかわります。だからこそ、暦を盲信せず天気予報をチェックし、ふさわしい服装に身を包む。

隣国ロシアの脅威に常にさらされ、ノルウェーの油田ような天然資源にも恵まれていない。それでも独立を勝ち取り、世界一幸福な国と呼ばれるフィンランドの底力を見ました。

どんなに運のいい人でも、一生にわたって運がいいわけではありません。東洋占術を極めて、「人生には悪い運気というものはなく、悪いのは選択」と言い切れるぐらいの開運の達人になりたいものです。

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事