よく「占い師は自分のことを占えない」と言われます。人のことなら客観的に見えるのに、自分のこととなるとバイアスがかかってしまうのです。開運とはほど遠く、財とも縁のない占い師がいるのはこのためでしょう。

しかし、占いの中でも命術は自分を客観視するツールにもなりえます。生身の自分と対面するのは気恥ずかしくて直視できなくても、命式やホロスコープ、易の卦やタロットから記号を淡々と読むことができます。

 

1985年、インテルの社長だったアンドリュー・グローヴは厳しい決断を迫られていました。

主力事業はメモリー事業でしたが、1970年代末からライバル企業が次々と出現します。そこでマイクロプロセッサー分野にも進出し、主力製品を二つに増やしました。

メモリー分野での競争は激化する一方で、1980年代に入ると日本製のメモリーが絶好調(現在とは隔世の感があります。国は繁栄し衰退していくのです)。

マイクロプロセッサー事業で利益を上げ続けていたものの、メモリー事業は低迷。グローブ社長は疲れ果てていました。会長と話し合いながら、窓の外の景色を学び、ふと浮かんだ問い。

「もし会社を追われ、新しいCEOが任命されたら、どんな策を取るだろうか」

会長はきっぱりと「メモリー事業からの撤退だろうな」

しがらみのない新CEOがそうするのなら、気持ちを切り替えて自分たちの手でやろうじゃないか。社内から反対の声は多く一筋縄ではいきませんでしたが、グローヴ社長はやりとげ、マイクロプロセッサー市場を支配する巨大企業に成長しました。

チップ・ハース&ダン・ハース『決定力! 正しく選択するための4つのステップ』で紹介されているエピソードですが、この本はビジネスマンだけでなく占い師にとっても有益です。

 

私情を断ち、他人事としてとらえるのは、頭ではわかっていても感情ではなかなかむずかしいものです。企業トップに上り詰めるような人でも、そこに至るまでは心理的抵抗もあり、時間がかかっています。占いを使えばそのハードルを乗り越える助けになります。四柱推命だったら大運や流運と自分の命式とかけあわせて「占い師だったらどうアドバイスするだろう」と他者の視点で読んでみるのです。

 

たとえば今の私は、スペインの巡礼の準備をすべきなのに、暑くなってきたからついビールや白ワインに手が伸びて夜をだらだら過ごしてしまいます。こうした「わかっちゃいるのにやめられない」という悪癖も、他者として自分を見ることが「何を馬鹿なことを続けているのか」と思いとどまるための第一歩となります。

世間からどう見られるかを気にして、やりたいことも我慢する人生はつまらないのですが、ときには自分を他人として突き放してみる視点も必要です。

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