易に親しんでいくと、自分と縁が深いと感じる卦が出てきます。

私にとっては「火山旅(かざんりょ)」。旅が好きだからというだけでなく、お金と関係がある卦だからです。

昨年12月25日のデイリーメッセージでは明治の易聖、高島嘉右衛門の読みを紹介しました。ドケチの友人を占って「火山旅」の初爻が出て、大いに説教したという話です。

自宅にいれば宿代はかからないし、自炊で節約も可能。お金が足りなくなったら家族や友人に頼れますが、旅先ではお金が何よりも大事。というわけで仁田丸久『周易裏街道』でも「火山旅」の解説にはお金の話がたくさん出てきます。

一般に八卦でお金を指すのは「沢」と「天」。「沢」は流通するお金で、「天」は資産。そして、「火山旅」の外卦の「火」もお金であり、災いであると仁田丸久は説きます。金を持つために災難を招く人があるのはこのため。クレジットカードのなかった時代、旅先で多額の現金を持ち歩くのは紛失や盗難をおそれて心が落ち着かなかったことでしょう。運が悪ければ金目当ての犯行で命を落とすことだってあります。

 

株も「火」の性質があります。理詰めだけでは、上がる株は選べません。最後は直感で決めるから。そして上げ下げに一喜一憂するのも禁物です。この箇所など、株式投資の極意を説いています。

火鉢の火をおこすのに、下手な人はいろいろいじって消してしまう。それと同じで火(財)というものはむしろ気にせざれば火自身が動いておこってくるもので、少し入金ありといえます。それを下手にさわぐとだめなのであります。

だったら私は「相場の放火魔」。これと見込んだ銘柄に火をつけ、大きく燃え上がるのを待ちます。「株で損をした。もう二度と手を出さない」という人は、株が上がると有頂天、下がるとあわてて売ってしまいます。いわゆる狼狽売りです。

 

そして、儲けた金はうまく隠すこと。お金持ちの身なりは質素でブランド品とは無縁。

私はこんなに金を持っているぞ、と見せびらかすんじゃなくて胴巻に隠している。身なりもむしろ一般以下のみすぼらしい格好をしているのです。(中略)私は北浜の株屋へ出入りする人たちの様子をよく観察したが、あの金を持っている人たちはみんな汚いボストンバッグに金を入れていることを知った。(中略)これは、金というものが火のようにうつろいやすいものだから、決して優待しちゃいかんという教訓になる。鰐皮の立派な財布に金を入れたりするのは、金が火のように移ろいやすいことを知らんものです。

北浜というのは大阪の証券取引所のある金融街で、東京なら兜町。昭和32年の話ですから、株を売買するためには現金を証券会社に持ち込む必要があったのでしょう。

 

そして「金というものは旅をさせんといかん」と続きます。外に出した金がそのままの金額で帰ってくると、尻をひっぱたいて追い出す。すると、娘と同じで子供を産みましてと、利子を持って帰ってくる…。

こんな風にうまくいくことばかりではありませんが、蓄財の初めには種火となる種銭が必要ですし、定期預金に預けっぱなしではお金の引きこもり状態。「火」が司る直感やフットワークの軽さを加え、かわいいお金には旅をさせる。ただし、扱いを間違えると火が消えてしまうのがむずかしいところです。

 

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事