「開運招き猫ーず」おかげさまで4人目は、立田アカツキ(たつたあかつき)さん。テーマは呪文で、単なる言葉がさまざまなプロセスを経て呪文となっていくのをおもしろく読みました。

9/16 土曜日のデイリーメッセージ《魔法の呪文を自作する》 - ウラナイ8 (uranai8.jp)

外国に出ると言葉の力を感じることが多くなります。自国だと特別な意識もなく言葉を使うことが多いのですが、外国に出ると慣れない言葉で意思の疎通を図るしかありません。日本だと言葉数が少ないのが美徳とされ、「言わなくてもわかるだろう」という雰囲気があるのと対照的に、スペイン人は言葉の民族。日常生活すべてが舞台であるかのように、朗々と言葉を発します。

 

スペイン巡礼で最もよく使うフレーズは「ブエン・カミーノ!(良き巡礼を)」です。巡礼者同士がこの言葉を掛け合うことが多いのですが、地元の人からも何度も言ってもらいました。カトリック教徒でもないアジア人が巡礼に参加してもいいのか不安な気持ちが吹き飛びました。

「カミーノ」は巡礼であり、広い意味では道。相手が進む道が良きものであるように願う気持ちを言葉にするのはすばらしいことだし、スペイン巡礼がこれほどまでに人気を集めたのはこの言葉のおかげかもしれません。

 

そして「ブエン・カミーノ」よりも強力な力がある言葉は「ポル・フォバール」。

巡礼中の休憩や食事、お茶、夜のアルコールと一日に何度もバルを利用しました。歩いているときはカフェコンレチェ(カフェオレ)。歩き終わったらセルベッソ(ビール)、夜は白ワイン(ビノ・ブランコ)。とりあえずこの3つの単語は覚えました。

バルのカウンターで「カフェコンレチェ、プリーズ」と言えば通じるのですが、せっかくだから「お願いします」の部分もスペイン語で言いたいと思い立ち、その場で聞いて「ポル・フォバール」と教えてもらいました。次の注文からは発音練習です。

 

ガウディ司教館で有名なアストロガという街。いつものようにお昼過ぎにアルベルゲに着き、シャワーと洗濯。昼寝はしないことにしているので、街歩きに出ました。あいにく司教館は午後2時から4時がシエスタの休み。時間をつぶすために向かいのバルに入った…と思ったら、なんだかテーブルや椅子などの調度品が格調高い。街中のバルなら仕事をしているかしていなのかわからないおじさんたちがビールを飲んだりしているのに、スーツやドレス姿のお客さん。後で調べたらアストロガで一番高級なホテルでした。登山ウエアと登山靴の私はいかにも場違いでしたが、引き返すわけにもいかず、カウンターで「カフェコンレチェ、ポル・フォバール」。

カウンターの女性はにっこり笑って愛想よくコーヒーを出してくれました。飲み終わって、司教館が開く時間になったので外に出たら、女性は休憩中で外のテーブルでお茶を飲んでいました。このあたり、日本の感覚と異なり休憩中のスタッフは奥に引っ込むのではなく、客席も自由に使うようです。私に気づいて「アストロガを楽しんでね。ブエン・カミーノ!」と声をかけてくれました。いかにもスペイン流の接客ですが、これを引き出したのは「ポル・フォバール」の一言だったと思うのです。

別のバルでは、こんなお菓子をおまけしてもらうこともありました。カステーリャ王国のお菓子、日本に入って「カステラ」となりました。

 

帰国して、日本語が使えるのが気楽で何も考えずに話すことが多くなりましたが、すべての言葉は呪文になりうるのですから、言葉を選んで使いたいものです。

 

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